1992年の第十四回中国共産党大会で「社会主義市場経済の確立」が決議されて以来、中国政府は市場経済整備に大きく舵を切り、朱鎔基総理が推進した三大改革(国有企業、金融、行政)、WTO加盟(2001年)が経済の効率化、国際化に寄与し、中国経済は世界中が注目する成長を遂げた。現時点では産業の担い手として、国有企業に加え、外資企業、民営企が大きな比率を占めており、沿海地区を中心に富裕層、中間層が生まれつつあると言われている。2004年、中国は世界第三位の貿易大国となり、その旺盛な需要は世界の資源価格に大きな影響を与え、中国企業の海外進出が本格化する時代を迎えている。この時代を担う第四世代の若い政権(胡錦涛総書紀・温家宝総理)は、国際社会で概ね好感を持って迎えられているが、同時に危うさ、ひ弱さも拭いきれない。この様な背景の中で、中国の経済・社会に地殻変動が感じられるので、その幾つかの特徴を列挙したい。
1、 この10数年来の急速な経済成長に伴い、失業の増大、貧富の拡大、三農問題、金融システムの未整備、環境・エネルギー問題等が顕在化しており、その改善、解決には長い時間と膨大な資金が必要と思われる。昨年来提唱されている「科学的発展観」は、これらの課題に取組み「持続可能な経済発展」を実現する為の考え方を示したものである。現政権は、政策の重点を「先富論」から社会の安定とバランス重視を最優先とする「和諧(調和)社会の構築」へと移した。
2、 現政権の「親民政策」は、社会のセーフティ ネットワークが十分に整備されていない現状で、弱者の救済、拡大した貧富の格差補正を狙っているものだが、以前に見られた共産党の独裁的指導力が影をひそめ、反対派に有無を言わせない迫力に欠ける。ブレーンの提言に耳を傾け、党内で民主的、科学的討論がなされている結果とも思えるが、胡・温政権の人気取りとさえ取り沙汰されている。
3、 2002年、江沢民の退任に花を添える形で「三つの代表理論」(共産党は、@生産力の発展、A先進的文化、B人民の根本的利益を代表する)が党規約に記載されたことは、中国共産党が労農の先鋒から国民政党への脱皮を目指すものと受け止めるのが素直だが、民営企業家が党権力と結びつく一方で、農民、失業者を中心とする暴動が各地で頻発している現実を見るとこの理論は空文化している、少なくとも共産党の進化に貢献していない。現政権は、革命戦争を知らない世代の国民を引き付ける新思想・機軸を打ち出せない悩みを抱えている。
4、 中華人民共和国建国(1949年)から今年で56年目を迎えるが、日本の明治維新(1868年)から数えて50−60年頃は大正末期・昭和初期に当たる。伊藤博文(1909年没)に続き、山形有朋、大隈重信などの維新の元勲が相次いで亡くなり、新しいカリスマ的権威が不在であった。単純な比較は危険だが、世代交代の時代背景は似ている。 以上
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