米国ペンタゴンが恒例の中国報告を発表したので読んでみよう。ANNUAL REPORT TO CONGRESS,Military and Security Developments Involving the People’s Republic of China
2011,Office of the Secretary of Defense である。22ページにChina’s Upcoming Military
Leadership Transitionと題したコラムがある。来年の第18回党大会において軍事委員会の指導部がどのように変わるかを予想したものだ。党大会までにあと1年という時点であるから、内外のマスコミが人事予想をするのは、いつものことだ。しかし米国国防省の防衛白書中国版が人事予想を書くのは、きわめて珍しい。これは何を意味するか。米中軍事交流の深まりを端的に示すものと理解すべきである。ではどのような予想なのか。
一つは、昨2010年10月の中央委員会(17期4中全会)で、習近平が軍事委員会副主席に昇格した人事を踏まえて、2012年党大会で、胡錦涛が軍事委員会主席のポストを習近平副主席に譲るかどうかが関心の一つ。これについては、It
is unclear whether Hu will follow in the footsteps of his predecessor Jiang
Zemin and remain CMC chairman for some period of time after relinquishing
his other leadership roles. と書いている。前任者江沢民のヒソミに倣って、党大会後の一定期間主席のポストに留任するかどうかはunclearだと見ている。
これは確かに誰にも分からない。しかし、おそらくは胡錦涛も江沢民のやり方に倣って18期4中全会までは主席ポストを保持して、4中全会で習近平にポストを渡すことになるであろう。白書はそこまでは書いていないが、行間を読むとそのように読める。そしてこれは私自身がこれまで書いてきた分析と同じだ。
私が特に注目したのは、この留任問題ではなく、党大会後も軍事委員会に留任して、次期の軍事委員会の指導部に参加するのは誰かについての予想である。ずばり常万全総装備部部長、呉勝利海軍司令員、許其亮空軍司令員の3名である。
この予想も私が書いてきた通りだ。それは現行の次の表から推測できるのだ。
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生年 |
2012
年齢 |
軍内の職務 |
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主席 |
胡錦涛 |
1942 |
70 |
文民 |
留任 |
副主席 |
習近平 |
1953 |
59 |
文民 |
留任 |
副主席 |
郭伯雄上将 |
1942 |
70 |
参謀系統 |
引退 |
副主席 |
徐才厚上将 |
1943 |
69 |
政治部系統 |
引退 |
委員1 |
梁光烈上将 |
1940 |
72 |
国防部長 |
引退 |
委員2 |
陳炳徳上将 |
1941 |
71 |
総参謀部部長 |
引退 |
委員3 |
李継耐上将 |
1942 |
70 |
総政治部主任 |
引退 |
委員4 |
廖錫龍上将 |
1940 |
72 |
総後勤部部長 |
引退 |
委員5 |
常万全上将 |
1949 |
63 |
総装備部部長 |
昇格 |
委員6 |
靖志遠上将 |
1944 |
68 |
第二砲兵司令員 |
引退 |
委員7 |
呉勝利上将 |
1945 |
67 |
海軍司令員 |
昇格 |
委員8 |
許其亮上将 |
1950 |
62 |
空軍司令員 |
昇格 |
この表で制服組10名の生年、すなわち2012年6月末時点の年齢を見ると、常万全63歳、呉勝利67歳、許其亮62歳である。67歳まで留任、68歳以上は引退という人事内規あるいは慣行にしたがうと、現行の制服組10名のうち、上記の3名だけが留任・昇格して、うち二人が副主席に昇格して、一人が国防部長として国務院との連絡役にあたることになるが、居残りあるいは昇格する3名は、年齢基準厳守というわけだ。このような約束事を中国側が米中軍事対話のなかで、ペンタゴンに漏らした。そこでこれが記述されたものと解してよい。ここから私は米中軍事交流・対話の進展を読み取るのである。
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さて、白書からもう一つの図を引用したい。おなじみのThe Chinese High Command、すなわち中国軍最高司令部である。
軍事委員会メンバー、総参謀部、総政治部、総後勤部、総装備部の中央4総部、7大軍区、海軍、空軍、第二砲兵、軍事科学院、国防大学、国防科技大学等、いわゆる大軍区級の組織の司令員と政治委員の氏名および彼らが正規の中央委員か、中央委員候補かを示したものだ。
さて、7月23日、6名の上将人事が発表された。副総参謀長孫建国、侯樹森,総政治部副主任賈廷安,海軍政治委員劉暁江,瀋陽軍区司令員張又俠,蘭州軍区政治委員李長才の6名が上将に昇格した。これら6名を表に書き込むと、次のようになる。これで、軍事委員会の主要メンバーは確定したことになる。
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