図説中国の経済第2版』(1998年、矢吹晋、S.M.ハーナー共著)以来10年ぶりに、矢吹晋ディレクターの本を作った。『[図説]中国力(チャイナパワー)―その強さと脆さ』420ページの大冊になったが、建国60周年を機に処理しきれないデータ・資料が21世紀総研に大量に集まり、打ち上げに際して酔眼朦朧、「では、もう一丁いきましょう」ということになった。
仮称、『中国経済地図』である。
『図説中国力』はグラフを多用したが、今度はデジタルマップを駆使する。地理情報システム(GIS, Geographical Information System)で、世界―東アジア周辺諸国―中国―地区―省―城鎮(都市)―城郷(農村)を鳥の目で見て鳥瞰図を描き、その逆に地域住民の生活空間の拡がり(地方―国家―国際)を省察して国民目線からの発展のあり方を洞察する。新中国30年と改革開放30年の経済発展パターンは、毛沢東の十大関係論と鄧小平の対外開放・先富論との経済地理観に依拠しており、前者はソ連社会主義モデルの全国一碁盤の平等化路線、後者は重層的市場経済モデルで沿海重視不平等・競争路線であったと言えようが、今後の成長発展図は新たな課題である。
(2)2009年GDP成長率の異変
なにはともあれ、具体的な見本を作ってみようではないか、ということで拙速に、21世紀総研で図1、図2、図3、図4のごとき統計(数値)地図とグラフを描いてみた。
| 図1 31省GDP2009 |
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図1は2009年の省別のGDPであり、●の大きさで各省の経済規模を表している。沿海部の東部が半分以上(53.8%)、中部、西部が約2割(19.3%、18.5%)、東北が8.4%のシェアを占めている。
| 図2 31省GDP成長率2009 |
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図2は2009年の省別のGDP成長率(年率)であるが、リーマンショック以後の世界同時不況の余波をこうむった輸出依存の沿海部の成長率が総じて低く、浙江8.9%、上海8.2%、広東9.5%と二ケタ成長が続かなかった(ただし大開発区建設中の天津は例外で16.5%であった)。一方、政府公共投資依存の内陸西部の内蒙古(17.0%)と四川(14.5%)、重慶(14.9%)の成長率が突出している。ジャーナリズムはこれを4兆元の景気刺激策のたまものと伝えたが、実はこれら内陸西部の3省市の高度成長は2000年以後持続している(その経緯を確認したのが図3である)。
| 図3 沿海と内陸のGDP成長率(年率) |
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図4 沿海と内陸のGDP成長率(3年移動平均) |
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| (資料)国家統計局、2009年は報道ベース速報値 |
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(資料)国家統計局、2009年は報道ベース速報値 |
図3を3年移動平均にして描きなおしたのが図4であるが、これで成長率の動きをもっと注意深く見てみよう。90年代初めに成長率で先陣を切ったのは外資の広東、私営企業の浙江である。90年代中期には浦東開発の上海が成長をリードした。90年代末のリセションを経て、21世紀に入って台頭したのが西部地区入りした内蒙古と三峡ダムの重慶、四川であり、さらに四川は四川大地震の復興事業で2009年にV字回復を遂げた。
以上は、わずか6省を見たにすぎないが、6省が沿海の南から北へ、沿海から内陸へと成長率が雁行形態で連なっている。これが中期トレンドであるなら、長期的に沿海→内陸、先進地域→後進地域へと地域の発展は津波の波頭の如くに伝わっていく、ということが言えるであろう。これは発展の経済地理学の重要な課題のひとつになり得、もっと詳しく、広く検証・分析してみるに値するのではないか。 |